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村興し・A君の挑戦

「夜は真っ暗ですよ。川があって、蛍が飛んでます。観光地としては何にもないけど、いいところですよ。ぜひ来てください」目を輝かせて語ってくれたA君。

大学生活最後の夏休み、実家に帰省する直前に、A君はこんなふうに声を掛けてくれた。こちらが返事を決めかねているうちに、実家に帰省したA君は、早速ご家族にそんな計画を話したらしく、次に会ったときはすっかりその気であった。

私の都合で行かれなくなったことを告げると、ひどくガッカリして、「食材まで用意して待ってたんですよ~(笑)」と言われ、ひどく申し訳ない気がした(ホントにあの時はゴメン!今になってみると、無理してでも行っておけばよかったかと後悔しきり)。

「次は必ず行くからね」と約束したのは、近々そんな機会はきっとあると思っていたからだった。

その後、A君は大学院へ進み、卒業。無事に希望の会社に就職した。しかし、にもかかわらず、1年で退社したという。「なんでまた?」と思いつつ、会って話を聞くことにした。

「村に戻って、いずれは村会議員になって村のために働きたい」村興しに乗り出すという。学生時代から思索を深め、細やかな人間関係づくりに奔走し、多方面の人脈を築いてきた彼のことだ。持ち前の行動力を生かして新しいスタートを切るに違いないと、こちらも期待しつつ、話に耳を傾けた。

出会った当初、A君は「地元は何もない所だから、東京に出たい」と言っていたっけ。それに対して「いつか郷里に戻りそうな気がする」と言った私。その言葉を、A君も覚えていた。「いつか戻るって言われましたよね~」としみじみ言う。

それから数ヶ月後、東京と郷里を忙しく往復する日々を過ごしていたA君だったが、たまたま時間が空いたというので、東京でその後の経緯を聞かせてもらった。
「当面は、地元産の野菜を東京で販売する仕事を手伝うことから始めたい。そのために、今日もアンテナショップを開設する準備をしてきたところです」と忙しそうだった。あの蛍の飛ぶ郷里の野菜や物産が都内に並ぶ日も近いと聞き、スタートしたら私も友人知人に広報してあげるからねと、背中を押した。私まで何だかウキウキしていた。

一歩一歩確実に夢に近づいている若者の、希望に満ちた前途を祝福したい気持ちだった。同時に、そんな夢のある話を聞かせてもらう機会に遭遇したことをありがたいとも思った。「じゃあ、がんばって!その後の話、楽しみにしているから」と握手をして別れた早春の昼下がり。2011年3月4日のことだった。

それからちょうど1週間後、3月11日に東日本大震災。直後に福島原発が事故を起こし、10キロ圏20キロ圏と避難区域が広がった。その中には、A君が村興しをめざした郷里も含まれていた。

☆ ☆ ☆

それから半年後、都内で野菜を販売するA君の姿があった。本来なら山ほど買って応援したいところだが、できなかった。放射能の数値の高い野菜が市場に出ていることをネットの情報で把握していたからだ。「悪いけど買えない、ごめんね」
彼の避難先の線量も決して低くはない。楽観的な彼に、私が把握している事実と、私なりの見方を伝える。地元のために何かしたいという彼の意思は変わっていない。応援したい私の気持ちも変わっていない。けれど、圧倒的な現実の変化の前に、彼も私も、無力としか言いようがなかった。

その後もA君の奮闘は続いている。目を輝かせて前途の夢を語る様子は変わらない。状況の断片を聞かせてもらいながら、彼の夢が単なる夢に終わらないためには、私に何ができるのだろうと自問自答している。

☆ ☆ ☆

村の感謝祭 
自然と一体となって育まれてきた伝統行事や食文化など、村の豊かな営みが偲ばれます。改めて失ったものの大きさを思わずにいられません。同時にこれだけのものを奪ったものへの憤りも感じないではいられません。

下に掲げたホームページの違いが村の現在を物語っていますね。生活のすべてを根こそぎ奪われるとはどういうことか、少しは私にも想像できる気がしました。近いうちに、A君とまた連絡をとってみたいと思います。

現在のホームページ  

事故前のホームページ

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