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産みの母は桜?

北海道では今が桜の季節とか。これで沖縄から始まった桜前線が4ヶ月半をかけて、日本列島を北上したことになるそうです。もちろんその時、その土地によって、桜の種類はいろいろなのでしょうが、改めて日本って南北に長いんですねえ!

ところで、その桜も絡んで、またもや憲法の話ですみません。

ほかの話題で、と思いながら、ついつい書いてしまいます。ちょうど一週間前ですが、東京新聞に「私の憲法論」という特集があり、詩人の宗左近さんが書かれていたことが、なぜか自分の気持ちにフィットしました。少し引用してご紹介します。ちょっと趣を殊にした憲法論です。でも、日本人の憲法って、こういうニュアンスでの理解、情緒とか感性とかが一体になったところで語られるほうが、より自然体かもしれないと最近感じています。

宗左近さんいわく、「すぐには納得いかないねえ、といわれるお話から申しあげる。お許しいただきたい。」と前置きされての論考です。

要約するのが難しい内容のお話ですが、敢えて強引に要約すると…、

桜の花に狂乱する日本人の桜狂いは、いわば被支配者層の民間宗教であり、その土壌が憲法第9条を生んだのである。「非戦の誓いは亡き友の化身」(記事の見出し)にほかならないのだ、ということです。それをこのように語られています。

梶井基次郎のエッセイ『桜の樹(き)の下には』※が書かれたのは15年戦争の始まる頃、

「桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている!(改行)これは信じていいことなんだよ」

これを15年戦争が終わってから読んだ氏は驚嘆した。「きけわだつみ」世代の生き残りという氏にとって、この屍体は友人達のものであり、非戦の誓いの憲法9条は、「友人たちの屍体の生命の液体を吸って咲き出た桜の花に他ならない。」という。しかしなぜ世界中で日本人だけが桜の花に狂乱するのか。宗さんはその答えを昨年、沖縄忌第二回俳句大会の選者となって出会った句に見つけ、衝撃を受ける。

「日本忌のなきは沖縄忌のあればこそ」(玉井克輔)

そしてその感動から、氏に次の二句が生まれた。

「憲法第九条あるは沖縄忌あればこそ

日本忌の無きは桜狂いあればこそ」と。

ここから先は、私の要約ではとても及ばないのでそのまま引用します。

…………………………………………………………………

「第一句の発想は当然であって、付け加えることはない。第二句には、付言が必要であろう。桜狂いは、日本の被支配者層すべての共有する民間宗教なのだと、わたしは思いついたのである。でなければ、あれほどの浸透の深さと広さはありえないのではないだろうか。

ただし、この民間宗教にはじつに強い特色がある。それは、先祖の(つまり死者の)魂(すなわち、桜の花)は、子孫のわたしたちの魂から鎮魂されるのではないということ。先祖の魂が、子孫のわたしたちの魂を鎮魂するのである。だからこそ、わたしたち生者は嬉しくなって踊り狂うのである。

そして、この土俗宗教の書かれなかった教義を文字にしたものこそ「国権の発動たる戦争と(中略)武力の行使は(中略)永久にこれを放棄する」という憲法第九条なのではなかろうか。

それなら、いわばこの桜教の神は、何なのであろうか。

岩波文庫『きけ わだつみのこえ』の最後尾には、敗戦後シンガポールの刑務所で、連合国の軍事裁判の誤認によって刑死した木村久夫の処刑前夜の短歌が載っている。

おののきも悲しみもなし 絞首台母の笑顔をいだきてゆかむ

じつに日本人庶民特有の、いわば桜教の神さまは《母》なのではなかろうか。死んだ母が蘇って咲き出て、生者のわたしたちの苦しみと悩みを、解き放ってくれる、鎮魂してくれるのである。だからこそ、みんなが、踊る。歌う。酔っぱらう。すなわち、憲法第九条を生んだ産みの母は、外ならず、桜なのである。

だからこそ、わたしは叫ぶ。「咲けよ初夏にも日本の桜」と。

(宗左近「私の憲法論」東京新聞2005年5月16日夕刊より)

※(梶井基次郎の『桜の樹…』リンク先はボランティア作成のサイトに貼らせていただきました。原典に当たっていませんのでご了承ください。)

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